少し前になりますが、先月末に厚労省が厚生年金についての夫婦分割受給の案を
社会保障審議会部会に示したそうです。
現在、いわゆる「専業主婦(夫)」で昭和61年4月以降の方は、
第3号被保険者として国民年金保険料負担なく、原則65歳から老齢基礎年金を受給できます
(細かい説明は省きます)。
夫婦共働きの方や自営業の夫婦に比べて、
公平感を欠いているとの指摘も以前から根強かったのですが、
まさか、こういう形の案が出てくるとは・・・。
今回の案はこうです。
会社員の夫と専業主婦の妻がいた場合、
夫の負担した厚生年金保険料は夫婦共同で負担したものとみなし、
年金を夫婦が半額ずつ受け取るというもの。
保険料の負担額や受け取る年金額はこれまでと変わりませんが、
専業主婦の受給する年金の根拠を明確にすることで不公平感を軽減するのだとか・・・。
まあ、根本的に理屈どおりの印象には収まらないのは置いておいて、
まだ詳細が明らかでない時にアレコレ考えるのも気が早いのですが
実はこれ、現行年金制度の「離婚時の年金分割」と「遺族厚生年金制度」に
とっても影響あるんじゃない!? って思ってしまいますよね?
例えば遺族厚生年金の今の仕組みはこうです。
例)夫が受給していた老齢厚生年金は100万円、妻は会社勤めの経験がなく老齢基礎年金のみ と仮定。
夫が死亡するとその75%が遺族厚生年金として妻に支払われます。
この場合は75万円です。
※ちなみに妻も老齢厚生年金を受給している場合は、
①夫の老齢厚生年金の75%相当
②夫と妻の各々の老齢厚生年金の50%ずつを足した額
上記①と②の大きい額と、妻の老齢厚生年金との差額が遺族厚生年金の支給額
現行制度では夫死亡後、専業主婦の妻には自分の老齢基礎年金+75万円の遺族厚生年金、
となるわけですが、もし法改正され、単純に夫婦の老齢厚生年金がともに50万円となると・・・・
夫死亡により
①夫の老齢厚生年金の75%相当 50万円×75%=37.5万円
②夫と妻の各々の老齢厚生年金の50%ずつを足した額 50万円×50%+50万円×50%=50万円
上記①と②の大きい額と、妻の老齢厚生年金50万円との差額は・・・0円
よって、妻には遺族年金なし (現行制度より25万円の減)
となってしまいます。特段の例外的計算をしない限り理屈では・・・。
もちろん、タイミングの問題でしょうが。
いわゆる専業主婦の体の良い年金封じ込め法案 となる可能性高いですよね・・。
どういう内容で国会提出となるか、あるいはまたどこかで案がしぼむのかはわかりませんが、
社労士やFPだけでなく、ちょっと年金を知ってる人は容易に気づく内容です。
制度の詳細や影響の説明をどの程度謳うのかによって、
政治の稚拙さをまたもやさらけ出してしまうかもしれません。
(本当に)頭の良い官僚の方々が考えた案の一つであるのは間違いないことなのですし、
厚生労働大臣の実質的な権限として、いくつかの案の中から何かを採用すると決める、
その決定権がどの程度なのかは定かではありません。
でも、小宮山大臣、どこにでもいるようなインテリ女史風なのですが、
たばこと専業主婦の年金には、以前から発言してたみたいですよね。
そのタバコの値上げ意欲のコメントをしていた様子は、
言っちゃ悪いですが、どうもハリポタのアンブリッジ先生のキャラと被って仕方ありません・・・。